大阪市内の「山」

 大阪市内にある山のご紹介。

大阪五低山(大阪アルプス):いずれも地形図に記載あり。

天保山山岳会が提唱した大阪市内の低山の総称。いずれも地形図に山名が記載されている。
天保山 二等三角点天保山4.53m 港区築港 天保山公園内 安治川浚渫の残土を積み立て天保2年にできた築山。目印山目標山(めじるしやま)ともいった。幕末に砲台設置のため平坦化された。三角点がある中で日本で一番低い山とされる。
聖天山 標高点14m 阿倍野区。正円寺の所在地の高台。近くに丸山があったが跡地の碑と通りの名前に名残がある。
御勝山 標高点14m 生野区勝山北 御勝山古墳 敷地内立入禁止 もとは岡山といった。
帝塚山 三等三角点帝塚山19.88m 住吉区帝塚山西 帝塚山古墳 敷地内立入禁止 明治時代まで大帝塚と小帝塚があった。小帝塚が今の帝塚山
茶臼山 標高点26m 天王寺区茶臼山町 天王寺公園内 開園時間7時‐22時。古墳説あり。古称は荒陵徳川家康が陣を張り勝利したので御勝山ともいう。

 ☆そのほかの「山」:昭和山以外地形図に記載なし。

昭和山 33m 大正区千島 千島公園内 貯木場跡地に地下鉄建設残土を積み立てた築山。複数のピークを有する。鶴見新山築造までは大阪市最高峰だった。1976年千島公園開園。地形図に山名記載あり。
鶴見新山 39m 鶴見区緑地公園 鶴見緑地内 開門時間4~10月 9:00~17:30、11月~3月 9:00~16:30。地下鉄建設残土と廃棄物の築山 大阪市最高峰。造成中の1973年ころは廃棄物から発生したメタンガスが自然発火し煙が立ち上っていた。1983年一般開放。完成当初は標高45mだったが地盤沈下により縮んでいる。

真田山 天王寺区餌差町 明星学園敷地が真田山か。学園敷地東側公道に面して真田丸跡の碑がある。山頂らしさはない。
宰相山 天王寺区玉造本町 三光神社鎮座地。古くは姫山とも言った。
 真田山と宰相山は別個の山か同一の山かわかりにくい。
 摂津名所図会には「嬪山稲荷祠 玉造の南にあり。世に真田山といふ。社説には宰相山といふ。嬪山は旧名なり」とあり、真田山と宰相山と姫山を同一の山のように書いている。嬪山稲荷祠は三光神社のこと。
 「天保新改攝州大坂全圖」には「真田山」の東に「宰相山 真田山イナリ」が描かれておりそれぞれ別の山としているが、稲荷社(今の三光神社)は真田山を冠している。
 真田山の方が名前の通りがよく、一帯の高台が真田山と呼ばれるようになったのではないか。
法蔵山 天王寺区産湯稲荷神社鎮座地 古くは愛久目山愛来目山(あくめやま)といった。東成区の比売許曽神社の御旅所になっている。
 大阪府全志2巻p453:もと愛来目山と称せしが、孝徳天皇の白雉二年冬十二月晦味経宮に多くの僧尼を集めて一切経を読ましめ給ひしとき、その経机仏具等を此の山に蔵められしより此の名起れりと。
安井天神山 天王寺区安井神社鎮座地 参拝可能時間7時~16時。摂津名所図会には山として描かれている。落語の「天神山」の舞台。
五榎山(うへのやま) 上野山とも表記。また五榎木山(うえきさん)ともいう。所在地は生野区桃谷の彌栄神社の北側の大きな邸宅の敷地。この辺りの昔の地名、木村(このむら)の地名由来という。古くは比売許曽神社(東成区東小橋)の御旅所であり、渡御が行われていた。(『大阪府全志』3巻p258)

☆平坦化された山・失われた山

瑞賢山 波除山ともいい、築造当初は新山ともいった。港区弁天の弁天東公園内に波除山跡の碑がある。河村瑞賢がおこなった安治川開削工事の残土でできた築山。今は平坦地。
稲荷山 北区太融寺町 円頓寺の所在地の古称。今は平坦地。
杉山 中央区鵲森宮の北にあった。大阪城公園森ノ宮噴水~音楽堂付近。陸軍施設設置のため削られた。噴水西に旧町名碑「杉山町」あり。今は平坦地。
岩船山 小橋村西南の田んぼの中に丘があった。岩船の伝承がある。小橋村に字岩船があり、今の天王寺区味原町、支援学校付近か。正確な所在地不明。
大葉刈山 味原の池の西にあり。(摂津名所図会3巻)。詳細は不明。
ゴモク山 江戸時代、堀川が直角に曲がるところ、今の扇町公園辺りにあったゴミの山。ゴモクはゴミの意味。
神山 北区神山町 綱敷天神社本殿の裏手にあり、地名の由来になった小山。第二次大戦の空襲で小山は消滅し、残った土を本殿の盛り土にした。
丸山 阿倍野区丸山通 古墳。跡地の碑がある。聖天山のそばにあった。地名やマンション名に名残をとどめる。
焰硝山 御蔵跡町(今の中央区日本橋2丁目・高津3丁目の各一部)にあった人工の山。江戸時代末期に火薬生産のための土を掘った残土が積みあがってできた山。近代に入って都市化が進むと消滅した。(『大阪府全志』2巻p577)
四極山 しわつやま。磯歯津山とも書く。今の東住吉区平野区の境界、喜連付近にあったという小さな丘。呉坂という坂があったという。(『大阪府全志』3巻p160)
 

☆番外編:山じゃないけど山っぽいもの

新夕陽ヶ丘 此花区北港緑地 人工島舞洲に作られた高台。天王寺区の夕陽ヶ丘にあやかった名前。
大阪市中央体育館 港区八幡屋公園内 緑豊かな丘陵をモチーフに建設された半地下式の体育館で、公募によりグリーンヒルの愛称がある。屋上は展望公園になっている。都市公園内での建蔽率の規制をかいくぐるため半地下式となった。
浪花富士山 大阪市天王寺区 生玉公園内にあった富士山を模した木製の遊興展望台。明治22年開業し1年ほどで廃業した。上町台地崖上なので今もそれなりの眺望がある。
高津宮 大阪市中央区高津 開門6時 閉門18時。四方より高い土地に鎮座する。地形的には山と言える。高い建物が増えるまでは眺望の良い景勝地だった。

☆番外編:大阪市近傍の名誉「山」

蘇鉄山 一等三角点大浜公園6.97m 堺市堺区大浜北町 大浜公園内 築山。一等三角点がある中で日本で一番低い山とされる。地形図に山名記載あり。堺区大浜北町1丁付近にあった御蔭山から蘇鉄山へ三角点を昭和14年(1939)に移設した。
菜切山 標高約3m 兵庫県尼崎市菜切山町 武内宿禰の墳墓と伝承される微高地。敷地は柵で囲われており立ち入りはできない。1950年代まで地形図に名前が載っていた。もし現在も地形図に記載があれば、宮城県仙台市日和山(標高3m)と並んで日本一低い山を堂々と名乗れただろう。

 

☆参考資料

摂津名所図会 https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2608609
大阪府全志 https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/965798
今週の今昔館 http://konkon2001.blogspot.com/
国際日本文化研究センター 所蔵地図データベースhttps://lapis.nichibun.ac.jp/chizu/index.html
大阪市立図書館デジタルアーカイブ http://image.oml.city.osaka.lg.jp/archive/

 

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