江戸系手締めの分類のおはなし

手締めには大きく分けて「江戸系」と「上方系」の2系統があります。

江戸系手締めは江戸(東京)を中心に東日本に分布し、手拍子主体で構成されます。

上方系手締めは大坂(大阪)を中心に西日本に分布し、手拍子と掛け声から構成されます。

 

今回は江戸系手締めの分類についてお話したいと思います。

江戸系手締めの代表はなんといっても一本締めと三本締めです。

マスメディアや興行の発達によって全国に広まり、今や手締めの代名詞と言っても過言ではないでしょう。

しかしながら、江戸を中心に関東各地には三本締め・一本締めとは別の手締めもまた数多く継承されています。

 

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江戸系手締めの簡易分類

上の表は関東地方各地に伝わる手締めを分類したものです。

手締めを四分の四拍子のリズムとして捉え、休符ごとの拍の数でタイプを分けました。

基調となるリズムで分けたので、繰り返しは考慮していません。(三本締めも一本締めも同じ短3331型に含めた)

 

・長3331型 シャンシャンシャン シャンシャンシャン シャンシャンシャン シャン

 府中(東京)と八王子で行われる手締め。十締め(とおじめ)とも呼ばれる。一本締めのリズムと同じだが、ゆったりとしたリズム。

  八王子 https://youtu.be/HQ5b2MwDwtQ?t=25

・短3331型 シャシャシャン シャシャシャン シャシャシャン シャン

 一本締めや三本締めのリズム。日本全国で行われている。

  三本締め https://youtu.be/NoDOeNofMsA?t=3

・333型 シャンシャンシャン シャンシャンシャン シャンシャンシャン

 熊谷と鹿沼で行われる手締め。長3331型の最後の拍を減じたリズム。

  熊谷 https://youtu.be/fw1Gwg-pgdo?t=17

・331型 シャンシャンシャン シャンシャンシャン シャン

 江ノ島(腰越・片瀬)、西多摩(青梅・五日市・檜原村など)、川越、日光などで行われる手締め。長3331型から3拍(1小節)減じたリズム。

  片瀬 https://youtu.be/ERBTFg4V398?t=8

・34型 シャンシャンシャン シャシャシャンシャン

 埼玉、茨城、千葉など関東広域で行われている手締め。西は愛知県や静岡県、北は秋田県岩手県などでも類似のリズムの手締めが継承されている。331型から派生したリズムだろうか。短3331型と同じく2小節の手締め

  三宅島 https://youtu.be/tUvl1kkmqHw?t=46

  秋田県花輪 https://youtu.be/AC3F4rbCw_c?t=100

・341型 シャンシャンシャン シャシャシャンシャン シャン

 34型と同じく埼玉、茨城、千葉などで行われている手締め。34型の派生だろうか。

  千葉 https://youtu.be/FRTCodsmxyY?t=182

 

これらのリズムのうち長3331型と333型はそれぞれ2か所程度でしか確認できず、331型もあまり数が多くありませんでした。

リズムに緩急が付くためか、8分音符を含むタイプの手締めが主流のようです。

分布の傾向として、東京都中心部(およそ23区)を取り巻くように短3331型(一本締め等)以外のタイプの手締めがみられます。

 

型の名前を数字で表しましたが、それぞれの手締めは地名を冠して呼ぶのが普通です。

例えば341型には千葉締めや茂原締めなどがあり、34型には秩父締めや鬼石締めなどがあります。

 

「[地名]+締め」で手締めの名前を表すのは、三本締め・一本締めに倣っているように思えます。

 

最後に、文章だけでは味気ないので、動画のご紹介です。

埼玉県の公式youtubeチャンネルが埼玉県内各地の伝統的な手締めの動画を公開しています。

「埼玉の手締めhttps://www.youtube.com/playlist?list=PLCD0E99C917A5BCF4